一方、生命保険をうまく活用すると、相続税を低く抑えることができます。
贈与税がかかる場合や相続税・所得税などの税金がかかることになりますが、その構造は複雑です。
保険料負担がどなたか、受取人はどなたかということで違ってきます。
生命保険にかかる税金の仕組みを解説します。
2015年の法改正で、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。以前なら非課税で相続できたのに、改正後で納税対象になってしまった人が大勢います。
そこで注目され始めたのが節税効果の高い少額の生前贈与で、中でも生命保険を利用した贈与で節税対策をしようとする方が増えていると言います。
ですが、実際のところ節税効果はどうなのか?ここでは生命保険金の納税方法を、相続税・贈与税・所得税の3つを比較して考えてみます。
生命保険にはどんな税金がかかり、税金の支払いがない場合はどんな条件があるのでしょうか?
生命保険にかかるとされる税金での大事な考え方は、
★「保険料を負担している人はどなたなのか?」
★「誰が保険金をもらったのか?」
ということがポイントになります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 |
夫 | 夫 | 妻や子ども |
契約者=被保険者のときは「相続税」がかかります。
この場合は夫が生前のうちに、自分に保険をかけ保険料を負担し、自分の死によって妻や子どもにお金がわたります。夫の資産が妻や子どもにわたるということになるのです。
しかし、この場合は一定額までは非課税になっています。
その計算式は
500万円×法定相続人の数
となります。
・家族構成:夫・妻・子どもが2人
・亡くなった人:夫
・法定相続人:妻と子ども2人
ということは、
500万円×法定相続人3人=1,500万円
この場合、1,500万円が非課税ということになります。(この金額の内訳は3人が500万円ではなく、子ども2人が750万円で妻が0円、妻が1,500万円で子どもが0円としても非課税のままです)
契約者 | 被保険者 | 受取人 |
妻 | 夫 | 子ども |
この場合は、保険料を支払っているのが妻ですが、夫が亡くなってしまったときには子供に保険金が支払われることになります。
保険料の支払い時に妻は亡くなっていないので、生きている妻のお金が子供にわたるという考えとなります。
生前贈与という事になるので贈与税がかかります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 |
夫 | 妻 | 夫 |
この場合、保険料を負担しているのは夫で、妻が亡くなった時に夫に保険金の支払いが行われます。
夫が保険料を支払って、夫自身が受け取ることになります。
なのに、何故「所得税」がかかるのかというと、保険料を1,500万円負担→保険金1,500万円支給の場合の税金はかかりません。(所得=もうけという考え)
しかし、保険料1,500万円負担→保険金2,000万円支給の場合は2,000万円-1,500万円=500万円の500万円(のもうけ)に対して所得税がかかります。
ひとつめは、保険金額に対して、受取人一人につき500万円の控除です。
保険金の課税対象額=保険金-控除額(500万円×相続人数)
つぎに、相続財産全体における控除が付きます。
2017年の法改正で控除額は次のようになりました。
課税対象額=相続額-基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)
2000万円 - (3000 + 1200万円)= マイナス2200万円
このように3000万円の保険金なら、課税額がマイナスになって税金は発生しません。
受取人が2人の場合、保険金を含む相続財産が5200万円以下では税金が発生しないことを知っておいてください。
3つめの控除ですが、これは納税額に対する控除です。
ちなみに保険金が7000万円だったとしますと、2つの控除を引いて1800万円の課税額が残り、相続税が発生します。この納税額に対してさらに控除されます。
納税額 = 課税対象額 × 相続税率 -控除額
1800万円 × 15% - 50万円 = 220万円
これは親子ふたりの納税額ですから、ひとり110万円の納税です。
ただし、妻の場合は相続額が1億6,000万円未満であれば税免除されますから、親子の納税額は110万円となります。
親の生命保険を毎年の贈与金によって無税でかけていく方法にはメリットがありますが、保険金を受け取るときの納税額を事前に計算しておかないと、後で大きなソンをしてしまう可能性があります。
今回は平均的な保険金額でシュミレーションをしてみましたが、結果は相続税にするとメリットが大きかったです。
ただし、保険金の額やかける期間、受取人の人数など、場合によって事情が変わりますので、詳しくは専門の法律事務所などでご相談ください。