マイホームを所有されている方が遺言書を書くときや、相続が起きて配偶者が住み続けるときに配偶者居住権の知識は欠かせません。
配偶者居住権の概要やメリット・デメリットなど、不動産相続で役立つ知識を紹介していきます。
配偶者住居権は、「相続が起きたときに、引き続き配偶者が自宅に住み続けることができる権利」です。
この権利が重要になる場面としては、例えば次のようなケースが挙げられます。
まず、ここでは夫が亡くなり遺産(マイホーム3,000万円と現金3,000万円)を妻と子の2人が
相続するものとします。
現在自宅に住んでいる妻が家を相続すれば今後も住めますし、
既に独立して遠方にいる子にとっては、家ではなく現金を相続したいはずです。
自宅を妻が、現金を子が相続すれば、金額も3,000万円ずつになって平等で、一見すると良さそうに思えます。
しかし、妻は現金を一切相続できないので生活に困ってしまいます。
そこで登場したのが配偶者居住権です。
これまでとは違って、今後は建物の価値・権利を所有権と配偶者居住権に分けて相続することができるようになりました。
例えば、マイホーム3,000万円の内訳が所有権2,000万円・配偶者住居権1,000万円だとします。
この時、妻は配偶者住居権1,000万円と現金2,000万円、子は所有権2,000万円と現金1,000万円を相続する形が取れるということです。
相続額が3,000万円ずつ平等になるように公平性を保ちつつ配偶者が現金を相続できるようになり、安心して生活できるようになっています。
配偶者短期居住権 | 配偶者居住権 | |
期間 | 最低6ヶ月 | 10年/20年/…/無期限 |
取得方法 | 不要 | 遺言 or 遺産分割協議 |
登記登録の必要性 | 登記登録が不要 | 登記登録が必要 |
配偶者短期居住権は自宅所有者が亡くなって最低6ヶ月は配偶者が自宅に住む事ができる権利です。
配偶者が居住建物に無償で住んでいた場合は遺言や遺産分割で配偶者居住権が認められていなくても「配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合は居住建物の帰属が確定するまでの間」や「居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄した場合」には取得できる事になっています。
配偶者居住権は所有者が亡くなって無期限に自宅に住む事ができる権利です。無期限だけでなく10年や20年といった期間を設ける事もできます。
配偶者居住権を取得するには遺言もしくは遺産分割協議(※)などで取得する事ができます。
さらに設定する上で法務局で登記登録が必要であり、配偶者居住権を抹消する時には法務局で抹消登記します。
※ 遺産分割協議:相続人全員で遺産分割について話し合う事です。
たとえば相続トラブルが起きて、裁判所から「遺産は平等に分けること」と決められたとします。
上記の事例のように、従来だと配偶者は自宅だけを相続することになり、現金がなくて生活に困るケースも起きていました。
しかし配偶者居住権が導入された現在では、妻が現金も受け取る形で遺産分割ができます。
配偶者居住権を使うには登記が必要ですが、登記をすれば「自宅に住み続ける権利」を法的に主張でき、住む場所を失ったり自宅から追い出される心配はありません。
その一方で、配偶者居住権にはデメリットもあるので注意が必要です。
・配偶者居住権は配偶者のみに認められた権利なので他人に売却できない
・配偶者居住権が設定された自宅の増改築を行うには所有権者の同意が必要
たとえば高齢を理由に老人ホームに移ろうとしたとき、配偶者住居権を他人に売却して入居費の資金にする方法は使えません。
それであれば、配偶者居住権は設定せず、最初から自宅を相続した上で売却して資金を得たほうが良いことになります。
また、配偶者居住権を設定すると増改築をするときに所有権者の同意が必要です。
例えば、自宅の改修工事をしたくても所有権者(前述の例では子)の同意が得られず増改築の工事ができないことも考えられます。
配偶者居住権にはメリットとデメリットの両方があります。
配偶者のことを考えて遺言書に配偶者居住権を記載すべきか、残された配偶者が権利を登記すべきか、どちらが良いのかはケースごとに異なるので一概には言えません。
どんな人が利用すると良いかというと…
・自宅の価値が遺産の半分以上を占めるケース
もしくは自宅以外に財産がほとんどないケース
・相続人との関係があまり良くないケース
・遺産に「自宅」が含まれるケース
が挙げられます。
「配偶者居住権」適用には、以下3つの条件を満たすことが求められています。
・残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること(内縁の夫もしくは妻は✖️)
・配偶者が、亡くなった人の所有する建物に、亡くなった時に居住していたこと。
・遺言により遺贈を受けるか、遺産分割協議、または家庭裁判所で配偶者居住権を所得したこと。
配偶者居住権は自動的に与えられる権利ではありません。
遺言書がない場合には、遺産分割協議でしっかり申し出て決めるようにしましょう。
家や土地が関係する相続では、配偶者住居権以外にも税金や登記など多くの専門知識が必要です。
そして、そこで生活する人の今後のライフプランを踏まえた「適切な不動産活用」の視点も欠かせません。
このような広い視野で考える中で配偶者居住権を使うかどうかも判断できるので、まずは不動産会社に相談してみましょう。
不動産会社に相談すれば総合的なアドバイスを受けられますし、税理士や司法書士など不動産に強い専門家を紹介してくれることもあります。
納得できる形で相続を終えるためにも、不動産のことは不動産会社に相談するのがおすすめです。
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